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きっと敦史さんだけ相手が見つかって、僕はひとりで寂しく帰ることになるだろう。一緒に参加するのは止めとこう。
「空は年上の女性にモテそうだな」
「えっ? そうですか?」
「何だか……そんな感じがする」
そういえば、初めて出来た彼女は大学の先輩だった。その次の彼女は……年上だ。告白も自分からしたことが無い。全部、向こうからぐいぐい来てもらっている。思えば自分から誰かを好きになって積極的に動いたことが無い。僕も、恋愛に夢中になれるタイプじゃ無いのかもな……。
そんなことを考えていると、敦史さんに頭をぽんぽんされた。僕の心臓が跳ねる。
「何と言うか……庇護欲が……」
「っ……! 僕は弱くないですよ!?」
「そういう意味では無くて……難しいな。空は守ってあげたくなる雰囲気を持っていると思う。そういうところが、年上の人には惹かれるものがあるんだろうな」
「守る……」
「空みたいな部下か弟が欲しいな。きっと可愛がってやれる」
それって喜んで良いことなのだろうか。
良く分からないけど、とりあえず「ありがとうございます」と言っておいた。
「あの、お風呂……蓋はしておきましたけど、冷めるとガス代がもったいないですよ?」
僕はいつも散々母に言われているみたいなことを口にした。敦史さんは吹き出す。
「そうだな。ありがとう、もう入るよ……何だか実家に帰ったみたいだ」
「あっ。別に僕はオカンタイプとか、マザコンとかじゃないですからね?」
「分かってる。家庭的なのは、良いことだ」
別に家庭的じゃないのにな、と思ったが反論するのは止めておいた。褒められて悪い気はしない。敦史さんは書類を手にリビングを出て行った。ひとり残された僕は、とりあえずテレビをつけてみた。明日の天気予報が流れる。快晴だそうだ。予定が無い日に限って良い天気になるものだなあ、と僕はぼんやりと画面の中のオレンジ色の太陽マークを眺めた。
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