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仕組まれたお見合い
「……えっと、何の話でしたっけ?」
三ツ星ホテルのレストラン。
もちろん貸し切り。
熱々のコーヒー。
ぼんやりしてしまい、話の内容を忘れてしまった僕は、馬鹿正直にそう尋ねてしまった。隣の母の草履がぐりぐりと食い込んで痛い。父はというと、さっきから仕事の話を相手のお父さんと真剣にしている。お見合いを頼んだのはそっちのくせに、無責任だ。
「まあ、この子ったら、昔からちょっと抜けてるところがありまして……おほほほほ」
「いえいえ、とても可愛らしいご子息様で……おほほほほ」
両家の母親たちは着物でばっちりキメている。髪をアップにしているせいか迫力があってちょっと怖い。着物の良さはさっぱり分からないが、きっとお互いに勝負服なんだろうなと思った。
「休日の過ごし方のお話をしていましたよ」
僕の真正面に座ったお見合い相手が笑顔で言った。
そう、父や母のことは、今はどうでもいい。
問題はこの人なんだ。
「ええっと、だいたいリビングでテレビを、」
「この子、映画が好きで、よく観ていますわ。おほほ」
すかさず母のフォローが入る。けど映画って言われても……金曜日の夜にやってる、ロードショーしか最近観てないんだけど。
「映画ですか。俺は最近ゆっくり観る暇が無くて……」
良かった。深く訊かれずに済みそうだ。
相手が仕事人間で助かった。
……いや、そうじゃなくて。
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