買い物デート

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 敦史さんに車を出してもらって、ショッピングモールに到着した。立体駐車場の空いているところに車を滑り込ませるように停車させる敦史さんは格好良い。僕は礼を言ってから車から降りて、だいぶくたびれてきている普段用の鞄を肩に掛けた。敦史さんも僕と似たようなワンショルダーのバッグを使っているけど……明らかに本革だ。そんな高価なものを持っていても浮かない敦史さんは凄い。身に着けている服も、きっと高いやつなんだろうな……なんてぼんやり考えていたら、敦史さんは首を傾げて僕を見た。 「空? どうかしたか?」 「あ、いえ、何も! それじゃ、行きましょう!」  先陣を切って足を進めた僕だけれど、ここのショッピングモールに詳しいというわけでは無い。結局、敦史さんに案内してもらうことになってしまった……恥ずかしい。 「俺が普段行くところで良いか?」  その言葉に頷いてから後悔した。僕の財布事情は寂しい。高い店に連れて行かれても困るなぁ……なんて悩んでいる間に目的のショップに到着してしまった。 「コート、ジャケットは……出ているな。ほら、あそこ」  シックな色合いのコートを指差しながら、敦史さんが足を進める。僕も慌ててそれに続いた。敦史さんは、黒いコートを手に取って僕に当てた。 「これなんか、似合うんじゃないか?」 「そ、そうですか?」 「試着してみると良い」  試着!?  そんなのしたら、買えませんなんて言えない雰囲気になってしまう!  僕は、敦史さんが店員さんを呼んでいる隙を見計らって、ぶら下がっている値札を確認した。  ――あ、あれ?  値段は税抜きで二万円ちょっと。あれ、ゼロが一個足りないんじゃないかな……? もっと高級品を取り扱う店だと思っていたのに。敦史さん、金銭感覚はそんなに僕とかけ離れていないのかな。僕はそんなところに好感を覚えたのだった。
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