買い物デート

12/13
前へ
/125ページ
次へ
 翌朝、リビングに向かうと敦史さんはすでに起きていて、スマートフォンを片手に誰かと通話していた。 「ああ……分かった。すぐに向かうから出来ることは進めておいてくれ。それじゃ……ああ、了解」  僕の姿に気が付いた敦史さんが苦笑する。 「部下がトラブルを起こしてしまって……休日出勤することになった」 「大変ですね」 「ちょっと遅くなるかもしれないから、俺のことは気にせず過ごしてくれれば良い」  着替えてくるよ、と敦史さんは自室に消えた。僕はまだ半分眠っている頭で何か出来ることは無いかと考えて……。 「ああ、良いにおいだ」 「敦史さん、朝食取ってから出て下さいね」  敦史さんが出勤の準備をしている間に、僕はコーヒーを淹れてパンを焼いた。おかずを作るまでは時間が無くて出来なかったけど。 「ありがとう、空。助かる」 「いえ……」 「さっそく、いただこう」  着席した敦史さんがトーストに齧りつく。上下する喉仏に思わずどきりとした。敦史さんは早いペースで朝食を平らげて、最後に丁寧に両手を合わせて「ごちそうさま」と言った。 「残念だな。今日も空と過ごしたかったのに」 「……また、来週がありますよ」  何気無しに提案しただけだったのに、敦史さんは笑顔で頷く。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4133人が本棚に入れています
本棚に追加