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翌朝、リビングに向かうと敦史さんはすでに起きていて、スマートフォンを片手に誰かと通話していた。
「ああ……分かった。すぐに向かうから出来ることは進めておいてくれ。それじゃ……ああ、了解」
僕の姿に気が付いた敦史さんが苦笑する。
「部下がトラブルを起こしてしまって……休日出勤することになった」
「大変ですね」
「ちょっと遅くなるかもしれないから、俺のことは気にせず過ごしてくれれば良い」
着替えてくるよ、と敦史さんは自室に消えた。僕はまだ半分眠っている頭で何か出来ることは無いかと考えて……。
「ああ、良いにおいだ」
「敦史さん、朝食取ってから出て下さいね」
敦史さんが出勤の準備をしている間に、僕はコーヒーを淹れてパンを焼いた。おかずを作るまでは時間が無くて出来なかったけど。
「ありがとう、空。助かる」
「いえ……」
「さっそく、いただこう」
着席した敦史さんがトーストに齧りつく。上下する喉仏に思わずどきりとした。敦史さんは早いペースで朝食を平らげて、最後に丁寧に両手を合わせて「ごちそうさま」と言った。
「残念だな。今日も空と過ごしたかったのに」
「……また、来週がありますよ」
何気無しに提案しただけだったのに、敦史さんは笑顔で頷く。
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