買い物デート

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「そうだな。また来週も、その次もあるな。今日は仕方ないから頑張ってくるよ」 「……っ」 「空。昨日は本当に楽しかった。ありがとう」 「あの、僕の方こそありがとうございました」  立ち上がった敦史さんは手を伸ばして、僕の頬に触れた。 「痛まないか?」  昨日のことを気にしているんだ。僕は首を振る。 「平気ですから、気にしないで下さいね」 「……ああ。でも、もし何かあったらすぐに知らせてくれ。駆け付けるから」 「今日は仕事があるじゃないですか」 「仕事なんかより、空の方が大切だ」  ――っ!  そんなことを言われたら、意識してしまうし勘違いしてしまう。僕は赤くなった頬を隠すように俯いて、敦史さんの背後に回り込んで背中を押した。 「ほら、早く行かないと!」 「あ、ああ。それじゃ、行ってきます」  強制的に敦史さんを送り出して、玄関のドアを閉める。途端に、大きな溜息が漏れた。 「……敦史さん」  ぽろりと零れた名前。  おかしいな、こんな気持ちになる予定は無かったのに。  僕は行き場に迷う感情を心の奥に仕舞い込むことも出来ずに、高鳴る胸の鼓動を静かに聞いていた。 「……パン、食べよう」  自分のパンを焼く気になったのは、敦史さんが出て行ってから三十分も経った後だった。
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