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目の前に飛び込んで来たのは、見間違えようもない、敦史さんの車だった。僕は駆け出して、車に近付く。すると、運転席のドアが静かに開いて敦史さんが出て来た。
「敦史さん!」
「空、お疲れ様」
ふっと敦史さんは微笑む。車内からは微かにラジオの音が聞こえている。まさか、ずっと僕を待っていてくれた……?
僕が口を開こうとしたその時、須田が「おお!」と呟き勢い良く話し出した。
「こんばんは! 初めまして! 俺は先輩の後輩の須田って言います! 今日は先輩には俺のミスの尻拭いをしてもらっていたのでこんな時間まで付き合わせてしまいました!」
「そうですか。ああ、俺は……」
「知ってます! ルームシェアをしているんですよね! いつも先輩がお世話になってます!」
「いや、そんなことは……」
「イケメンですね! びっくりしました! 先輩、こんな感じでぽわぽわしてるけど頑張って生きてるんで面倒見てやって下さい! よろしくお願いします!」
「えっと……」
「それじゃ、俺は帰ります! 先輩、今日は本当にありがとうございました!」
また明日! と手を振って、須田は駆け出して行った。残された僕たちの間に、小さな静寂が訪れる。
「……嵐みたいな子だね」
「すみません……」
「……とりあえず、帰ろうか」
「はい……」
僕たちは車に乗り込み、マンションまでのドライブを始めた。
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