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敦史さんが車に戻って来た。そして、僕の顔を見て首を傾げる。
「どうした? 難しい顔をして」
「いえ、その……明日の会議のことを考えていて」
「そうか。空は真面目だな」
ふっと笑って敦史さんは荷物を後部座席に置いた。僕は車の鍵を敦史さんに渡す。彼はそれを受け取って、エンジンを掛けた。
「疲れただろう? 早く帰って食べような」
「……はい」
僕は腕時計を見る。日付はとっくに変わっていた。明日、敦史さんも早いのに……本当に申し訳無い。
こういう時、恋人同士なら……お礼だと言って、いろいろ癒してあげられるのにな。でも、残念なことに僕は男で敦史さんとは恋人同士でも無い。ただ、一緒に暮らしているだけの、ちょっと親しい間柄。ああ……もどかしい。
……って、待って!
癒すって何だ!?
僕が、敦史さんを癒す……ご奉仕……。
「あああ……」
「空!? どうした、急に」
「いえ、その、ちょっとした問題ですから気にしないで下さい」
「そ、そうか?」
ちょっとした問題なんかじゃない。
僕の頭の中はえらいことになっていた。
ベッドの上に座った敦史さん。その足の間に膝をつく僕。見つめ合ってキスをして、敦史さんのそれを口に……ってところまで妄想してしまった。
ああ、僕は馬鹿だ! 本当に残念でどうしようもない奴だ!
僕は鞄に顔を埋める。そして、小さく反応してしまっている身体を鎮めるために、息を大きく吸っては吐くことを繰り返した。
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