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僕の言葉に、敦史さんは首を振る。
「いや、それは困る」
「こ、困る?」
「楽しみなんだ。毎日、昼が来るのが」
敦史さんは微笑んで僕の目を真っ直ぐに見て言った。
「空の手作りって思うだけで、心が躍る」
「そ、そんな、大袈裟ですよ」
「この前の休日出勤の時も、空はわざわざ俺のために作ってくれただろう? 嬉しかった。本当にありがとう」
そう、この間の土日は敦史さんは休日出勤だった。けど、僕は平日と同じようにお弁当を作った。いつも残さずに全部食べてくれることが、嬉しかったから。
「つ、ついでですから」
「空は休みだったのに?」
「朝ご飯のついでです」
「そうか。ふふ……」
もしかしたら「胃袋を掴め作戦」のこと、バレてるかもしれない……。
いや、そんなことは無い……はず。だって、男だし。僕は、可愛くも無いただの男だし……。
あんまり喋るとボロが出る気がして、僕は敦史さんから目を逸らしてコーヒーを啜った。目の前の敦史さんからは、とても機嫌が良さそうなオーラがふわふわ漂っていた。
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