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ショッピングモールに着いたのは開店時間の少し前だったので、スムーズに駐車が出来た。開店と同時に店内に入って、買い物カゴを手に取ろうとした、が。
「空、服が見たい。少し寄って良いか?」
敦史さんがそう言ったので、僕たちはエスカレーターで紳士服売り場まで向かった。前に一緒に買い物をしたショップだ。並んでいるのはすっかり冬物で、手触りの良さそうなセーターに思わず目を奪われた。すると、敦史さんが言う。
「良い色だな。空はこれが似合うと思う」
敦史さんが指差したのは茶色いセーター。僕が良いなって思ったやつだったので、心を読まれたのかとどきどきしてしまった。僕は敦史さんに言う。
「敦史さんは、こっちの黒いのが似合いますね」
「そうだな……良く買うのはモノクロだから当たっている」
「イメージチェンジして、この赤いのとか着ますか?」
「うーん。今回はパスだな」
それから店内をぐるりと回って、敦史さんの買い物は終了した。なんと……例の茶色いセーターを買ってもらってしまった。付き合ってくれたお礼だって言われてしまえば断れない。
敦史さんは、黒いのを買ったから……色違いでお揃いだ。うわぁ……心がむずむずする。恥ずかしい。嬉しい。恥ずかしい。頭がパンクしそうだ。
落ち着きを無くした僕をよそに、敦史さんが「お茶でもしないか?」って誘って来た。僕はそれに賛同して、エスカレーターを使ってレストラン街に二人して向かった。
「何が良い?」
「うーん。あ、抹茶のデラックスパフェ!? 凄い!」
目に飛び込んで来たのはパフェの上にケーキがどどんと乗った、大きな抹茶のパフェの看板。なんだこれ!? 是非味わいたい! 僕はこれが良いですって敦史さんに伝えた。
「寒く無いか?」
「寒い日に冷たいものを食べるのが良いんですよ!」
僕の言葉を聞いた敦史さんは、可笑しそうに笑った。そして「じゃぁ、俺も挑戦しようかな」ってカフェへ足を進めた。その時。
「あれぇ? 空君?」
聞き覚えのある女性の高い声に、僕は呼び留められたのだった。
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