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僕は何と答えるべきか迷ったけど、当たり障りのないように説明した。
「実は、ルームシェアをしている人で……」
「ええっ!? 空君がルームシェア!? 実家から梃子でも動かなかった空君が、とうとう自立への一歩を踏み出したの!?」
「……あはは」
あまり踏み込まれても困るので、僕は話題を変えた。
「そっちは? 新婚でしょ? 毎日楽しい?」
僕の言葉に、真紀ちゃんは困ったように首を振る。
「楽しいことばかりじゃないよ。だんだんちょっとした価値観の違いとかが見えて来てさ……別に嫌いにはなったりしないけど、うーんって悩むことも多いかな」
「そっか」
「空君は大丈夫? ルームシェアって気を遣うことが多いんじゃないの?」
気を遣う……か。
まさか、その相手に振り向いてもらおうとしているなんて言えない。僕は曖昧に笑って肯定も否定もしなかった。
「それじゃ、そろそろ行くね!」
「あ、うん」
「イケメンさんによろしくね!」
「……了解」
僕に手を振りながら、真紀ちゃんは下りのエスカレーターの方に向かって行った。
良いなぁ。
好きって、同じ気持ちの人と一緒に居られるのって幸せだろうなぁ。苦労もしてるみたいだけど、きっとそれ以上に幸福なんだろうな。
真紀ちゃんの姿が見えなくなってから、僕は敦史さんの待つカフェへと入った。
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