作戦開始

10/13

4133人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
 女性。真紀ちゃんのことだ。僕は思わず姿勢を正す。 「はい。真紀ちゃんって言います」 「幼馴染と言っていたな」 「そうです。幼稚園から一緒で」 「そうか……」  それから敦史さんは、聞き取れるか聞き取れないかの微妙な声で言った。 「……お似合いだと思うぞ」 「ええ、そうですか……はい?」  お似合い?  え? 僕と真紀ちゃんが?  僕は驚いてぽかんと口を開けたまま敦史さんを見つめた。彼は僕から目を逸らしたまま言う。 「彼女、しっかり者みたいだし、空と相性が良いと思う。だから、その……応援するよ」 「ま、待って下さい! そんなのあり得ないですから!」 「しかし……」 「そもそも、真紀ちゃんは結婚していて、今、新婚ほやほやなんですよ! だから、それはあり得ない話です!」 「そうか……何? 結婚、している……?」  今度は敦史さんが驚いた顔をする。僕はそんな敦史さんに「そうですとも」と頷いて見せた。 「中学と高校も一緒でしたけど、そういう関係には一度もなりませんでした」 「そうなのか……? いや、俺はてっきり……」 「僕、あんな怖い子とは付き合えませんよ」 「何? 彼女、怖いのか?」 「ええ、幼稚園の時、良く喧嘩して泣かされました」  それを聞いた敦史さんは、くすりと笑った。そして、柔らかい表情で言う。 「そうか、良かった……」
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4133人が本棚に入れています
本棚に追加