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パフェを食べ終わってから、地下の食品売り場に向かった。
なんだか上機嫌に見える敦史さんの横を、どきどきしながら僕は歩く。
「あの、お弁当……リクエストとかあれば言って下さい」
「ん? ああ、何だって良いよ。空が作ってくれるなら何でも嬉しい」
ほら、すぐそういうことを言う!
さっきから僕の心臓は忙しなくばくばく鳴っている。
これ、チャンスあるのかな? 僕の作戦、上手く進んでいるのかな?
そんなことを考えながら、買い物カゴに商品を入れていく。月曜日のお弁当は、ハンバーグにするんだ。焼くだけで完成のやつだけど。
僕は同じく焼くだけで完成のウインナーの袋を手に取った。その時、五歳くらいの女の子とぶつかりかける。慌てて身を引いて回避したら、女の子は不思議そうに大きな目をぱちぱちとさせた。
「お兄ちゃん、こんなところで踊ってるの?」
「お、踊る!? ……はは、まぁ、そんなところ」
僕の動きが躍っていたみたいに見えたのだろう。僕は苦笑しながら女の子に言った。
「君は? ひとり?」
「うんとね、パパとママはあっち」
女の子が指をさす方向を見ると、若い夫婦が仲睦まじい様子で牛肉を吟味していた。女の子は誇らしげに腕を組んで僕に言う。
「私はね、お弁当に入れてもらうウインナーを取りに来たの。ひとりで!」
「そうか。それは偉いな」
敦史さんが微笑む。女の子は敦史さんのことを見た瞬間、分かりやすく頬を赤らめてもじもじし出した。
「も、もうすぐ私、お姉ちゃんになるの。だから、これくらい出来て当然なんだから!」
確かに、女の子の母親のお腹は膨らんでいる。ああ、お姉ちゃんになるってそういうことか。
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