溶けるようなキス

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「空」 「う……ん」 「空」  夢かな。  敦史さんの手のひらが、僕の頬に触れている。嬉しくて、僕は微笑んだ。もっと、撫でて欲しい。頬だけじゃなくって、いっぱい、全部。 「空、具合が悪いのか?」 「……あ、え?」  だんだん頭がクリアになって来た。夢じゃない。これは現実だ!  僕は慌てて起き上がろうとした、けど、酷い頭痛に襲われてそれはかなわなかった。 「い、痛い……」 「風邪か? どれ……」  敦史さんの手のひらが僕の額に当てられる。冷たくて気持ち良い。僕は思わずうっとりと目を閉じてしまった。 「……熱いな。今日は休んだ方が良い」 「え……平気です!」  僕ははっとして目を開けて、今度こそ起き上がった。風邪くらいでは休めない。体調の管理が出来ないなんて、社会人として失格だ!  ところが、起き上がった僕の肩を敦史さんが押す。僕はまたソファーに身を沈めた。 「駄目だ。休みなさい」 「いいえ。大丈夫です」 「……空の会社はブラックなのかな? 社員が高熱を出しているというのに休むことを認めないのか?」 「い、いえ。そんなことは……」 「なら、いますぐ連絡を入れなさい。言いにくいなら俺が電話を掛けようか? どうする?」 「……自分で言います」  僕はソファーから抜け出して自室にスマートフォンを取りに向かった。
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