溶けるようなキス

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 そのまま自室で連絡を入れる。電話に出た上司の声はまだ眠そうだった。「珍しいな。まぁ、ゆっくり休みなさい」と怒られること無く会話は終了したから、まぁ、安心……。  ふっと気が抜けた瞬間、僕はベッドに倒れた。ああ、力が入らない。変なの。僕みたいな馬鹿で残念な奴は風邪なんか引かないはずなんだけどな……。 「空」  敦史さんがノックも無しに部屋に入って来た。そして、僕を見て息を吐く。 「ちゃんとして寝ないと駄目だ」 「う……ん」  僕はもぞもぞと動いて、ちゃんとベッドの布団を被った。あったかい。瞼が、だんだん重くなってきた。そんな僕の、頭を、敦史さんが撫でる。ああ、夢かな。敦史さんがとても近い。僕を覗き込むその瞳は心配そうに歪んでいた。敦史さん、そんな顔をしないで。夢の中では一番の笑顔を見せて。 「朝食を食べて、そうだな……置き薬があるから、それを飲んだ方が良いが、食べられそうか?」  僕は首を軽く振る。夢の中だもの、お腹は空かない。  そんなことより、僕が、一番、欲しいのは――。 「敦史さん……キスして」  僕は手を伸ばし、敦史さんの頬に触れながらそう言った。夢なのに、敦史さんの表情はリアル。驚いたように目を見開いていて、ぱくぱくと何か言いたげにくちびるを動かしていた。  少ししてから、敦史さんが口を開いた。 「欲しいのか? 俺が」  僕は微笑む。 「欲しい。敦史さんが、欲しい」
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