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急ぎ足でシンクに向かう。けど、敦史さんも立ち上がって付いてきた。ああ、僕の顔を見ないで!
シンクに洗い物を置いたその時、がっしりと肩を掴まれた。僕は驚いて固まる。見上げた敦史さんの瞳は、恐ろしいくらいに真剣に光っていた。
「その反応は、思い出したようだな?」
「あ、え? あの……思い出したのは……夢の内容だけで……」
「夢? どんな?」
敦史さんの手のひらが僕の頬に触れる。ち、近い……!
そんな、まさか、僕たち夢の中でキスをしていました、何て言えない! けど、本当のことを言うまで敦史さんは食い下がらないだろう。僕は、小さな、蚊の飛ぶような声で俯きながら答えた。
「……キスを、しました」
「誰と?」
「あの、えっと……」
「空」
「その……敦史さんとですっ!?」
言った瞬間にくちびるを奪われた。いきなりのことに混乱する。何で? キス? あれ?
なんで僕たち、現実でもキスしてるんですかー!?
「ん、ん、ん!」
「……悪い」
僕は敦史さんの胸を押した。すると、敦史さんは小さな声で謝罪をした。けど。
「もっと、したい」
「は? え?」
「もとはと言えば、空がもっとと言ったんだぞ?」
「え……?」
言った気がする。ねだった気がする。
……待って。何で夢の出来事を敦史さんが知っているんだ!?
もしかして、あのキスは、夢じゃなった!?
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