溶けるようなキス

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「う、うわあああ!」 「空!」  僕は恥ずかしさのあまり自室に向かって駆け出した。  なんてこった!  あの時の僕は、夢だと完全に信じていたからあんなに大胆になれただけなのに!  自室に飛び込んで鍵を閉めようとしたその時、敦史さんも室内に飛び込んで来た。「うわっ!」と勢い余った僕たちはベッドにダイブした。敦史さんが……僕を押し倒す体勢で。 「空」 「ああ! 待ってください! お願いです! 時間を下さい!」  僕はもぞもぞと手を伸ばして、枕を引っ掴んで自分の顔に当てた。けど、そんなものは簡単に敦史さんに剥ぎ取られる。 「空、俺の目を見て」 「……はい」  僕は手を引かれ、ベッドの上に座らされた。敦史さんも正座をして、まっすぐに僕を見据える。 「空の気持ちを聞かせて欲しい」 「……」  僕の、気持ち。  そんなの聞いてどうするの!?  フラれるの? 僕の恋、終わっちゃうの!?  頭がずんと重くなる。僕は敦史さんの目を見ながら、逃げ道を探したけど……見つからない。ああ! もう! よし! 僕だって男だ! 腹を括るぞ!  そう決意したのは良いものの、僕の口から出て来たのは、とてもか細い声だった。 「……好きです。その……敦史さんのことが」  言った瞬間、僕の身体は敦史さんの腕の中に居た。
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