溶けるようなキス

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「……やっと、聞けた」 「……え?」  やっとって、どういう意味?  僕が首を傾げると、敦史さんは苦笑しながら言った。 「確信は無かったが、どうなんだろうな、とずっと思っていた。だが、今朝のキスで、ああ、そうなんだな、と完全に理解した。まさか、空から、しかも告白の前にキスをねだられるとは思ってもみなかったが」 「あ、あれは、夢だと思ったから……」 「夢になんかさせない」  敦史さんが僕の背中をゆっくりと撫でた。そんな触り方されたら、全身がぞくぞくして、息が荒くなる。僕はそれを誤魔化すように、敦史さんに訊いた。 「……敦史さんは、僕のことをどう思っているんですか?」 「好きだよ。愛してる」 「な……」  眩しいくらいの笑顔でそう言われれば、返す言葉も見つからない。僕は目を逸らしながら「いつからですか?」と訊くのが精一杯だった。  敦史さんは微笑む。 「いつからと言われても答えに困るな。気が付いたら心が奪われていた」  ――空……出会い方が違っていたら、俺たちは……。  敦史さんがそんなことを言っていたのを思い出す。僕はおそるおそる訊ねた。 「あの、僕と、別のかたちで出会いたかったんじゃないですか? 前にそういう感じのことを言っていましたよね? それって、どういう意味なんですか?」 「……聞いていたのか。そう、こんな嘘の同居じゃない、普通に出会って普通に恋をしていれば、関係性も変わっていただろうな、ってことだよ」
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