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それって、出会ってすぐの頃のことだ。え、敦史さん、そんなに前から僕のことを……?
僕の目を見てすべてを悟ったのか、敦史さんは苦笑しながら口を開いた。
「最初は、綺麗な子だなって思った」
「綺麗……」
「なのに、ちょっと中身がズレていて可愛いなって思った」
「な……それって、やっぱり残念だって思ってたってことじゃないですか!」
「違うぞ。断じて違う」
敦史さんが僕の頭を撫でる。
「たまに料理の味付けを失敗するところも、洗剤と柔軟剤を間違えるところも、時々ネクタイが曲がっているところも、すべてが愛おしい」
やっぱり僕って残念だ!
地味に傷付く僕をよそに、敦史さんは僕をより近く抱き寄せる。
「可愛い。可愛くて、仕方が無い」
「っ……」
頭が爆発しそうだ。
急な展開について行けない。僕は敦史さんが好きで、敦史さんも僕が好きで。つまりは両想いで。
……と言うか、敦史さんずっと「どうなんだろうな」って思っていたんだ。恥ずかしい! 僕の気持ちバレバレ……まぁ、積極的にお弁当作りしてたけど。
「あの、敦史さん……」
「うん?」
僕は躊躇いながら口を開いた。
「僕は、敦史さんが好きです」
「ありがとう」
「けど……僕じゃ、敦史さんを幸せに出来ないです」
「どういう意味だ?」
「だって、僕……子供、産めないし」
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