溶けるようなキス

13/13

4133人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
「空、そういうことをするのは風邪が治ってからだ」 「……え?」  ぽかんとする僕の頬を、敦史さんがむにっとつまむ。 「空の気持ちは嬉しいが、今はその時じゃない」 「は……え? いや、平気ですから!」 「駄目だ」  敦史さんはそうきっぱりと言って、横たわる僕に布団を被せた。 「そろそろ薬の作用で眠くなってくるだろう。朝まで寝なさい」 「そんな……」 「それに、俺もまだまだ勉強不足だから、空の身体を傷付けないか心配なんだ」  勉強、不足。  それって……つまり、僕の身体を暴く方法を調べてくれていた……!? 「お、おやすみなさい!」  恥ずかしさがこみ上げて来て、僕は布団を頭から被って丸まった。そうだよね。男同士っていろいろ……やり方があるよね。 「空、おやすみ。ゆっくりやっていこうな」  僕のことを布団越しに撫でてから、敦史さんは部屋を出て行った。  怒涛の……一日だった。  嬉しい、恥ずかしい、嬉しい……! 「っ……!」  僕は自分のくちびるに触れる。ああ、いっぱいキスしてしまった!  夢みたい……。  だんだん重たくなる目蓋に従って目を閉じる。明日には風邪、治ってると良いな。そして、敦史さんと……。 「……恋人になったんだ」  そう、両想いで告白し合って、キスして……僕たち、恋人同士になったんだ……。 「あふっ」  思わず変な声が出た。  これ以上起きていたらどうにかなってしまいそうなので、眠ることに専念する。  敦史さん、ありがとうございます。僕、今、とっても幸せです――。  夢と現実がもう入り混じりませんように。そう願いながら、僕は眠りの世界へと旅立った。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4133人が本棚に入れています
本棚に追加