夜の勉強

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***  あっという間に土曜日になった。  僕は、見慣れた風景を懐かしいな、なんて思いながらぼんやりと出されたお茶を啜る。 「す、すみません! 大したものが無くて……」 「いえ、お構いなく」  敦史さんに僕の母が大袈裟に言う。敦史さんは爽やかに微笑んで「いただきます」と湯吞み茶碗に手を伸ばした。 「そ、それにしても元気そうで安心したよ! 久しぶりだなぁ!」  テーブルの上の父の手は微かに震えている。緊張しています、というのがバレバレだ。ああ、恥ずかしい……。  どうして、こんな状況――僕と敦史さんが、僕の実家に居るのかと言うと、話は一時間ほど前に遡る。休日に付き合って欲しいところがあると言われていた僕は、出かけるんだな、くらいの気持ちで部屋着から出かける用の服に着替えてリビングに向かった。そしたら、そこにはぴしっとジャケットを羽織った敦史さんが居た。あれ? ちょっと良いところに行くのかな。そう思っていたら……。 「空。空のご実家に行きたい」 「……はい?」  ぽかんと立ち尽くす僕を、敦史さんは抱きしめた。 「交際の、報告をしないと」 「……は? あ、いえ! そんなのまだ先で良いですよ!」  僕たちが、その、恋人になって日は浅い。だってまだ、キスしかしてないし……。  渋る僕に、敦史さんは真っ直ぐな目で言う。 「俺は空と真剣に付き合いたい。だから、しなければならないことはちゃんとしたいんだ」  そんなことを言われたら断れない。僕は頷いて、敦史さんの胸に顔をぐりぐりと押し付けたのだった。
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