4133人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
「テレビでも観ましょうか!」
裏返った声で言う父に、敦史さんは「いえ」と短く答えた後で姿勢を正した。そして、深呼吸をしてから口を開く。
「今日は、大切なお話があって参りました」
「ひっ……」
「っ……」
父も母も姿勢を正す。僕はそれをどきどきしながら眺めていた。
「息子さんとは……」
「……はい」
「正式に、お付き合いをさせていただいております。ですので、今後も共に生活をさせて下さい。お願いします」
そう言うと、敦史さんは深々と頭を下げた。僕もつられて「……お願いします」と呟く。室内に、沈黙が走った。
「……あ、え? お付き合い、している……?」
数秒してから口を開いたのは父だ。ぽかんとした顔で、僕と敦史さんを交互に指でさしながら掠れた声で続ける。
「そ、そうですか……? いや、今日はその……お断りのご挨拶に来られたのかと思って……」
「違います。交際を、認めていただきたいと思い参りました」
「はぁ……そ、そうですか。いや、驚いたなぁ……」
「……素敵じゃない!」
魂が抜けたように椅子に凭れる父とは違って、母は興奮気味に立ち上がって手を叩いた。
「やだ、もう……まさか本当にこんなことになるなんて……ああ、幸せ……」
「……母さん?」
「あ、いえ。何でも無いわ。おほん、良いじゃない! カップル成立ね!」
最初のコメントを投稿しよう!