夜の勉強

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 寿司を取ろう! と意気込む両親に、僕は「待って」と止めに入った。 「これから、行くところがあるから」 「えっ? どこに?」 「……敦史さんのご実家」 「え?」  敦史さんは驚いた声を上げた。僕は恥ずかしくて俯いて言う。 「僕も、ちゃんとご挨拶したいから……駄目ですか?」 「……駄目じゃない。嬉しいよ。ちょっと待ってくれるか? 連絡を入れるから」  そう言って敦史さんはスマートフォンをジャケットから取り出して外に出た。その姿を見送った後、僕は母に腕を掴まれてキッチンの隅まで連れて行かれた。 「な、何!?」 「ねぇ、どっちがどっちなの?」 「え? 何が?」 「なんとなーくだけど、あんたがしてもらう方?」 「はい?」 「夜の話よ。察しなさい」  してもらう……夜……!  僕は真っ赤になって母の手を払った。 「な、何てこと訊くの!?」 「重要なのよ。私的に」 「馬鹿じゃないの!?」  心臓がばくばくとうるさい。ほっといてよ! そもそもそういうことまだしてないし!  僕の様子からすべてを察したかのような母は、悪魔のような顔で僕に言う。 「ま、何事も勉強よ。知識はあった方が良いわよね」 「……」  僕は何も答えず、キッチンを飛び出した。ちょうど戻って来た敦史さんと鉢合わせになって、心臓が止まるかと思った。
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