始まった同棲生活

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始まった同棲生活

「……あの、今日からよろしくお願いします」 「こちらこそ、よろしくお願いします」  段ボール箱の隙間で、僕たちは頭を下げ合った。  一週間というものは短いもので、あっという間に引っ越しの当日になった。僕は必要最低限の荷物を段ボールに詰めて、引っ越し業者に運んでもらった。僕の実家から敦史さんのマンションまでの距離はそんなに離れていない。足りないものがあれば取りに帰れば良いやと思った。  タクシーでマンションに到着した僕を、敦史さんはエントランスで待っていてくれた。予想以上に大きくて立派なマンションで、僕は家賃のことが気になって仕方が無かった。モダンな造りのエントランスに取り付けられている温かみのある照明に見送られながら、僕たちはエレベーターに乗り込んだ。  たどり着いたのは、やっぱり最上階。低いところから高いところに上ってきた影響で、頭が少しくらくらした。  エレベーターからちょっと歩いたところに敦史さんの部屋はあった。汚れ一つ無い黒いドアを開けてもらうと、僕が引っ越し業者に頼んだ段ボールがすでに運ばれて積まれているのが見えた。五箱しかないけど、ひとつひとつが大きいので場所を取っている。 「じゃ、部屋に案内しますね」 「あ、はい」  敦史さんについて行くと、リビングから二つ離れた部屋に通された。実家の僕の部屋より広い。家具の色は焦げ茶色に統一されていて、とても落ち着いた雰囲気になっていた。設置されているベッドがいかにも高級そうなやつで、思いっきり飛び込んでみたい衝動に襲われた。 「……気に入ってもらえましたか? 俺の趣味で揃えてあるんですけど……あ、ベッドとか机は買ってから一度も使っていないので安心して下さいね!」 「あ、ありがとうございます。とても気に入りました」 「そうですか。良かった」 「はい」 「……」 「……」 「荷物を運びましょう。手伝います」 「ありがとうございます」
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