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1話大人版おままごと
両腕を押さえつけられて殴られて蹴られる。
大事なものを一生懸命守りながら、殴られては蹴られる。
痛みよりこの大事なものを。
思わず手からがしまい、いじめっ子の孫打(まごだ)がげらげら笑う。
僕は沢山見てきたんだ。人の汚いところを。
だから僕の友達はこのお人形さんなんだ。
「いつもいつも高校にクマのぬいぐるみをもってくるなよ、きもちわりーんだよ」
「僕のクマさんはテリーっていうんだ。よろしくね」
「お前は誰としゃべってんだ?」
孫打がそれでもかと笑い続けると、次々山がやってくる彼はとてもおとなしくて、そしてがり勉だ。僕のようにおままごとばかりしていて成績が悪い人なんかよりできる。
「まったくここは高校です。たくさんの人たちが学習する場所です。あなたもあなたですよ殴る蹴るは蛮族がすることですよ?」
「うるせいよ、この生徒会長候補が」
「そうですか? この世界は頭をうまく使えば生きていけるものです」
「あーはいはい、わかりました。それでその人形を破壊しないと気が済まない」
「そういって僕の人形をすべて壊したじゃないか」
「そっか? そうだったっけか?」
それでもげらげらわらっている。
―――それから2時間が経過した―――
僕は涙をぼろぼろ流す。
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