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月を見下ろす少年
深い、暗い森。
紐でくくりつけられた立ち入り禁止の看板を気にすることなく、ひょいっとまたぐと青年は入っていった。
間違うことなき一本道。
なのに、そこに入れば未来永劫出られないのではないかと、重なり合う木の葉の茂みが暗く、暗く、深く覆い被さってくる。
それに気取られないように、足早に目的の場所へと向かった。
ここに初めて来たのは二年前の高校三年の時だ。度胸試しのように友人たちとやってきたのがきっかけだった。
山道の途中にあるここは、走り屋が大きな音を立てて走り去るか用事のある者しか通らない。しかも、少し奥まったこの場所は夜に気にする者などいないだろう。
たまに迷い込んだように、はたまた自分たちのように普段と違うことをして鬱屈したものを吐き出すようにやってくるだけだ。
中途半端に人を集める山。だからいろいろ噂があった。
バイクで事故った霊が出るだとか、森の奥に入ると出られないだとか、霊界に繋がっているとか。
それらを確かめようという話だったように記憶しているが、結局は怖い怖いと心の中で思いながら、非現実的な状況を楽しんでいた。帰りは「何もなかったな。つまんねぇ」と粋がって終わり。
自分たちも例に漏れずそんなものだった。
だが、それから青年はこの場所に魅入られた。
森の静かなる沈黙を俺は怖くないんだぞとばかりにさっさっと足を動かし、一本道が終わりを告げると眼前には池が現れる。
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