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「よく来たな、勇者よ」
「……」
「よ、よく来たな勇者よ!」
「いや、聞こえてないわけじゃないの分かってますよね?」
「魔王はどうしたのか聞きたいんですけど。……ねぇ、魔王の格好した副官さん?」
視線が冷たい。もう心が折れそうだ。
なんで私がこんな役回りを……
何度もここまで来てるのに魔王様に会えない。その気持ちは分かるが、分かるがあんまりだ。
全部魔王様が悪いのに……
「もうこれで何回目か分かってます?」
「……4か「5回目ですよ!」
「今回はなんですか?魔王が腹でも壊しましたか?」
あ、正解です。
さすが勇者、少年とは思えぬ勘の鋭さ。
「いや、魔王様は急に入った竜族との会合に……」
「ボク達、まだ魔王と顔合わせた事も無いんですけどぉぉぉ?」
あ、圧がスゴい。
が、押し潰されるな、頑張れ私。こんな時の為に必死に練習しただろう?
「ま、誠に申し訳ない。魔王様も心を痛めてらっしゃるのだ。勇者と魔王様と言えば光と影、同じカードの表と裏、まさに天敵と言う存在。その天敵を差し置いて雑事に追われるなどとは……」
おお、スゴいぞ私!上手い具合に口が回るじゃないか!
「なので今回は魔王様より御詫びの品をと言うことでコチラを」
奥の間からソレを持ってこさせる。
お、勇者の目の色が変わったか?
「ま、まさかそれは伝説の……」
「左様、伝説の鍛冶屋が生み出した魔槍。その名もタイヨウの槍!」
手応えあった!勇者にも通用した!このまま畳み込むんだ!
「お詫びの品で勇者に大人しく帰ってもらう作戦」開始だぁぁぁぁ!
……魔王軍副官の仕事かコレ?
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