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<第一話・暴走の魔女>
七塚花蓮の初恋は、幼稚園の頃である。
体が小さく、運動神経も悪く、男の子達にいつもからかわれて苛められてばかりだった花蓮をただ一人助けてくれた少年。年長のクラス“おひさまぐみ”で一番のイケメンで、頭がとても良い少年だった。
名字は忘れてしまったが下の名前は覚えている。確か、“みつる”君だ。はっきり言って同じ組の女の子よりも綺麗な顔をしていた。それこそ、お姫様のドレスを着せてもきっと似合うだろうな、というくらいには。
『だいじょうぶか?』
そして彼は、花蓮にとってはどんな戦隊モノのリーダーよりも、格好いいヒーローだったのだ。
“みつるくん”は体力こそなかったものの、とても口が達者だったのである。いじめっこ達をやり込めるのも非常に上手くて、大抵喧嘩を挑んだはずの悪ガキ達の方が泣かれて終わるばかりなのだった。彼は暴力を一切震わず、そして殴られてもいつも毅然としていて涙の一つも見せず、駄目なことははっきり駄目だと言う勇気を持っていた。
幼稚園のクラスの中では間違いなく浮いた少年であったのだろうが――それでも女子達は揃って彼に憧れていたし、それこそ堂々と“将来はみつるくんのお嫁さんになりたい!”なんて言う女の子もいたほどである。
――みつるくんのお家はどこかな。あそびにいきたいなあ。
花蓮の淡い淡い初恋は――しかし実ることなく、あまりにも残酷な形で幕を下ろされたのだった。
幼稚園の、クリスマス会――その夜突如として姿を消した彼。そしてその、二日後のこと。
大好きだった“みつるくん”は、この世を去ってしまったのである。
それも、あまりにも無惨な姿となって。
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