<第三話・波乱の幕開け>

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 そして、レッドスパイダーのボスである高坂が、ヘル・オーガからの命令だとゲロってしまう可能性も十分にあったはずである。レッドスパイダーが長年ヘル・オーガに仕えた忠誠心の高いチームならともかく、最近加わったばかり(しかも自分達のチームを存続させたいだけの理由で)の連中が命がけで秘密を守るとは到底思えない。ヘル・オーガの連中は、そんなことも読めないほど頭が沸いていたのだろうか? ――いや、普通に考えるなら、ゲロられても俺らに警戒されてもさほど問題がなかった……そう見た方が自然だな。  警戒されても問題がないと判断するなら、考えられる理由は主に二つだろう。  一つは、これ以上襲撃するつもりも関わるつもりもないので問題ないと考えているから。  もう一つは――相手が多少警戒したくらいで、自分達が負けるとは微塵も思っていないから、だ。 ――ちっ。後者の可能性の方が高いんだろうなこれ。俺らを完全にナメてるとしたら、やっぱりヘル・オーガのバックにはヤクザがついてると見て間違いなさそうだ。ヤクザの手助けがあって、力もカネも武器も揃ってるからいくらでも戦争できるってハラか?  あるいは、ヤクザの方が主軸となって、オーガを手足として動かしているか、だ。  その場合は、自分達の仲間三人を襲ったのもヤクザの意思ということになり、彼らを誘拐して連れていこうとしたのもヤクザの元へだったと考えられるが。死にかけている少年三人を誘拐して、一体何をしようとしていたのだろう?  殺人が目的だったか、殺人さえも“手段”でしかなかったのかどうかで大きく意味が変わってくるわけだが。 ――まるで迷宮だ……全然答えが見えねえ。……あの事件と、同じ。  ぐるぐると考えれば考えるほど、疲れた頭は休みたがり瞼は下がっていく。 ――結局、“みつる”を殺した犯人も捕まってないんだよな。……くそ、あり得ねえだろ。ガキ一人、惨たらしく殺しておいて……なんでそんな人間が、平然と野放しになってやがんだよ。許せねえよ、マジで……。  うとうとと微睡みながら、その晩は久しぶりに“みつるくん”の夢を見た。  小さな自分は、初恋の少年にしっかりと手を引かれて、恥ずかしくなって下を向いていた。もう二度と願うはずもなかった、“お姫様”のピンクのドレスを着ながら。
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