<第五話・プレリュード>

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 ***  自由にお遊びの時間、ともなれば。やはり園児によって、遊びたい内容というものは変わってくることだろう。 「よおおし、きょうはこおり鬼しよーぜー!」 「ええ、きょうは“機械戦隊メカレンジャー”ごっこするっていってたじゃん!」 「ばっか、ジャンケンしただろ?ジャンケンに負けたやつは、買ったやつのいうこときかないとダメなんだぜ!」 「えええ、やっくんひどいよお……!」  わいのわいの言いながら、真っ先に園庭に駆け出していく悪ガキ集団達。そうそう、幼稚園児達が外で遊ぶ遊びといったら、鬼ごっこか●●ごっこが定番だったよなあ、とうんうん頷く花蓮である。そして、彼らの会話から思い出した。当時の戦隊モノ、“機械戦隊メカレンジャー”。当時は土曜日の朝は必ず早起きして見ていたものだ。このメカレンジャーと、前の“忍術戦隊シノビレンジャー”、後ろの“海獣戦隊シャークレンジャー”はよく覚えていた。それぞれ推しの戦士がいたなあ、なんてのも懐かしい記憶である。  そう、女の子でも、戦隊モノを見ていることはけして珍しくないのだ。特に戦隊系は、メンバーに一人か二人女子を入れることでも知られている(もしかしたら昔はそうではなかったのかもしれないが)。大抵がピンクや白、黄色といったカラーの戦士だ。昨今では青や緑が女子戦士になることもあると聞くが、当時はそのへんの色が定番だった。当然、幼少期の花蓮も女子戦士を熱く応援していたものである。機械戦隊メカレンジャーでは、“メカピンク”を応援していた。あの女優は、今でもどこかで活躍しているのだろうか。 ――さて、仮にもならない仮だが。もし俺がこうして逆行したのが、ライトノベルのご都合主義なんぞではなく、誰かの意思によるものだとしたら。“俺”が“幼稚園児”まで戻ったのは、必ず理由があるはずなんだよな。  今の段階でも、考察できることはある。靴を履き、園庭の花壇脇の道を歩きながら考察する花蓮。 ――どうして“俺”だったのかはともかく。……幼稚園であったのか、って考えるならそうそう思い当たることは多くない。やっぱり、美鶴の事件が関係してると考えるのは自然な流れだよな。  今は、美鶴が死んだ年の夏の終わり。偶然だと言うには出来すぎているだろう。  自分を逆行させた犯人は、美鶴の事件を花蓮に再体験させたいのだろうか?何のために?それが花蓮に恨みを持つ人間で、嫌な思いをさせたいというのなら少々やり方が回りくどすぎやしないだろうか。もっと直接的に、花蓮を苦しめる方法などいくらでもあるような気がしてしまう。  ならば、花蓮に恨みがあるからそうさせた、と考えるのはやはりナンセンスだろう。花蓮に事件を体験させるためだとするのなら、まだ“事件を食い止めさせるため”だとか“事件の真相を探させるため”とでも考えた方が妥当ではある。それならそれで、他に適任者はいくらでもいるような気がしないでもないが。 ――美鶴が、殺された事件。結局、俺の時代でも犯人は捕まらないままになってた。時効はないけど、迷宮入りになる可能性はある。どうして、犯人は見つからなかったんだろうか。  鍵があるとしたらやはり、美鶴が殺されることになるあの事件なのだろうか。しかし、あの事件に関しても結局花蓮が知れた情報など僅かなものなのである。  クリスマス会があった日の夜、どこかに攫われて殺されたらしい。それも、非常に惨たらしい死に方をしていたらしい。大体わかっていることはそれだけのことである。
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