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「はーいお前ら注目ぅ!」
それから、十一年後の今。
あの頃の花蓮を知る人間が見たら卒倒しそうな現実が今、此処にはあった。
「やっと見つけたぜ?こそこそ逃げ回りやがってよぉ。何が“レッドスパイダー”だ、蜘蛛じゃなくて卑怯なネズミかゴキブリの間違いだろ?」
廃工場の入口を足で思いきり蹴りあげて、花蓮はドスの聞いた声を上げていた。
一応、高校生の身分なので制服は着ている。スカートも履いている。しかしどれも特注品、花蓮だけのオーダーメイドだった。
それもそのはず、身長177cmにして実戦空手で鍛えた筋骨隆々の身体では、とてもじゃないが普通の女子の制服など着れるはずもなかったからである。
唖然として座り込むカラーギャングの集団“レッドスパイダー”をねめまわし、花蓮はニヤリと笑みを浮かべた。
「俺の可愛い可愛い弟分達が、世話になったみそーで?……たっぷり礼をさせてくれよ、なぁ?」
喧嘩屋“ブラッディ・ローズ”、三代目総長“七塚花蓮”。それが、高校生になった花蓮の今の肩書きだった。
女子とは思えぬ立派な体躯に正義感、そして男子達も歯が立たぬほどの怪力と空手の技術。このテのギャングでは珍しい女総長となった花蓮の本日の仕事は、目の前でたむろっているカラーギャングをぶっ潰すことである。
理由は単純明快。彼らがブラッディ・ローズの仲間を三人ばかり病院送りにしてくれたからだった。やられたらやり返せ!倍返しだ!というどこかのドラマの台詞ではないが――実際、花蓮の流儀も似たようなもの。仲間の仇は迅速に、かつ丁寧にお返しするのが主義だった。
まあ、ぶっちゃけると倍返しどころではなく、殲滅する気満々なわけだったが。
「“暴走の魔女”七塚花蓮……くそ、名前がちょっと売れてるからってナメやがって!」
イライラとタバコを踏み消しながら、レッドスパイダーのリーダーである高坂秋人が立ち上がった。真っ赤なモヒカンを揺らしながら、仲間達に命令する。
「やれ!相手は一人だ!女だらかって手加減すんじゃねぇぞ!!」
「おうおうそうしてくれ、キモい男女平等主義とかまっぴら御免だしな。命知らずは嫌いじゃねぇぜ?」
「ナメてんじゃねぇぞコラァ!!」
いかにも三下の常套句を吐いて、真っ赤な服の集団が一斉に花蓮に対して襲いかかってくる。それを見つつ、拳をポキポキ鳴らしながら花蓮は思った。
さて、今日は新記録を更新できるだろうか、と。
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