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「対して転生者はその世界の住人として生まれ直すので、引き継げる力が少ない代わりに制限なく自由にその世界を生きることができるわけなのだ。……私はその転生者。元々の世界の魔法などは殆ど失ってしまったが、様々な知識などは最初の世界から全て引き継げている。自分で望んで転生者になったわけではなく……何故このような状況に陥ったのかもまだわかっていないがね。その謎を解明し、転生のメカニズムを現在実体験とともに研究している真っ最中というわけなのだよ」
「なんて研究馬鹿な……ていうか、お前もしかして、転生するのは今回で初めてじゃないわけか?」
「その通り。私の転生は初めてではない。この“千堂美鶴”で百三十六人目ということがわかっている」
「ひゃっ……」
とんでもない数字が出てきた。花蓮はポカンと口を開ける他ない。
「……それ、きつく、ないのか?」
純粋に出てきた言葉はそれだった。彼はたった今はっきり言ったからだ――望んで転生者になったわけではない、と。
一度で終わるはずの人生を、以前の記憶を引き継いで再度始めなければならない。しかも引き継いでいるというのなら、きっと死んだ時の記憶をも忘れていないはずである。
人生をそれだけ繰り返しているのなら、寿命で楽に死ぬような終わりなどそのほんの一部であったに違いない。時には恐ろしく苦痛を伴う死があってもおかしくはないのだ。
それを全て、忘れずに覚えている。それだけで恐ろしい恐怖だと思うのは、花蓮だけなのだろうか。
「きつい、と思ったこともないわけではない」
そんな花蓮に何を思ったのか、彼は少しだけ寂しい色を声に乗せた。
「しかし、苦しみを苦しみだけで終わらせるのか、未来のために生かす手段を見いだすかは選ぶことができる。私が研究者だからというだけではない。今を生きる人間全てに、それは須く与えられた権利にして、選択肢だからな」
「そう、か……」
「とまあ、そうやって私は転生とともに、いくつもの人生を繰り返してきたわけだが。残念ながら二つ問題があるのだ。一つは、何故自分がこのような転生者になったのか、その謎がなかなか解けないということ。私をこのような状況に追い込んだ“大きな意思”があると睨んでいるが、それは三桁繰り返してもシッボさえ掴めていない状態なのだ」
そしてもう一つは、と彼は続ける。
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