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「ふむ、確かにそうかもしれんな」
惚けた顔で頷く美鶴。
「しかし、そういうわけにはいかなかったのだよ」
「何でさ」
「お前も少し情報を整理していけばわかるだろうし、後で私の口からもある程度伝えるが……この世界の“大人”を私はあまり信用していなかったのだ。その点、幼稚園児であった人間ならば、無意識に悪事に荷担することはあっても……悪の組織の一員でした、なんて馬鹿なことはまずないだろう?某小さくなった高校生名探偵でもあるまいし」
「……とりあえず、お前が漫画とライトノベル大好きってことはよくわかったよ」
「ん?例の高校生名探偵の話はアニメも映画も見たぞ?」
「そーゆーこと言ってるんじゃねーわ、アホ!」
下手なツッコミをすると、話をずんずん脱線していかれてしまうらしい。一つ学んだ花蓮はげんなりしてしまう。
――しかし、大人を信用してないってどういうことだよ。幼稚園の先生もか?何でだ?まさか、本当に犯人の一味かもだなんて疑ってたってことなのか?
幼稚園の園児だった人間ならば無実だろう、と考える理屈はわかる。まあ、そこはわからなくもないのだが。
「その中で、私に対してそれなりに好意的であった人物の中からランダムで指名したわけだ。結果として、七塚花蓮。お前を選んだのは既に正解だったと思っているよ」
「どうしてだよ」
「決まっている。……お前は、私を見捨てる気がない、そうだろう?誰かのために頑張れる人間は目を見ればわかる。これでも、人を見る目には自信があるのだよ」
なあ?と言われて笑顔を向けられてしまえば。
悔しいかな、元がとんでもない美少年であるわけで。花蓮の初恋の相手であるわけで。
ついつい、顔が熱くなるのはどうしようもない、というわけで。
「お、お……おだてても、何も出ねーんだから、なっ!?」
結局こんな、お約束のような返事しかできないわけである。花蓮は己の無様さに、内心頭を抱えるしかないのだった。
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