<第二話・ブラッディ・ローズ>

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 そう、代替わりしてからもう一年になるのである。一年前にわんさか他のチームが喧嘩を売りに来るというのはまだ分かるのだが。何故今になって、チームの仲間が三人も一度に襲撃されることになるのか全くわからないのだ。しかも、三人ともが結構な重傷。一人はバッドでメッタ打ちにされて、意識不明の重体と来ている。殺しの一歩手前ではないか。  調べて見たところ、此処“数宮市(かずみやし)”の隣、“漢庭市(かんにわし)”のチームの仕業であると発覚。レッドスパイダーという、規模二十人程度の小さなチームである。揃いの赤い服を着て練り歩くことに拘る、いわゆるカラーギャングと呼ばれる集団だった。それはいいのだが、問題は。 「レッドスパイダーってチームは、歴史も浅い。ボスの高坂も初代の総長だし、話を訊いて回ったがさほど戦績があるってわけでもない。普通なら、俺ら規模のチームに喧嘩を売るなんてのは愚の骨頂もいいところだ、そうだよな花蓮?」  臨矢が尤もな意見を言う。 「そもそも、数宮市に残ってる他のチームだって、花蓮の喧嘩の腕を知ってほとんど大人しくなってる状態だ。なんで縄張りも被らない、隣の町のチームが喧嘩を売ってくるんだって疑問には思ってたよな。漢庭市の他チームと同盟でも組んで、一気に押し寄せてくるってならともかく」 「ああ、俺もおかしいと思ってた。で、結論としては……臨矢、お前が疑ってた通りだったぜ。ちょっと手間どったが、高坂が全部ゲロった」  少々喉が渇いたな、と思いつつ花蓮はカウンターにいる“先輩”を見る。勝手知ったるバーテンダーは、肩をすくめて奥に引っ込んだ。今日は酒を飲みたいという気分でもない。そもそも花蓮はこのテの総長としては珍しく煙草は吸わないし、酒もあまり好きではないのだった。まあ、未成年なのに普通に飲酒経験がある時点でどうなんだと言われそうな気はするけども。  どうせ飲むなら、そこそこ甘いノンアルコールカクテルで十分なのである。なんといっても、値段が安いし飲酒運転にもならない。そもそも大前提として、今日はバイクで此処まで来ているのだから尚更だ。ギャングのくせに真面目すぎでしょ、普通に樹にはツッコミを喰らうがそれはそれ、である。 「どうやら俺らが数宮でのんびりしてる間に、漢庭の方の勢力図がだいぶ変わったらしくてな。今あっちを仕切ってるのは、“ヘル・オーガ”ってチームらしい。相当な規模のチームで、構成員は三桁を軽く超える。そして、オーガの下にいくつも子分チームが傘下に入ってひっついている状態だそうだ。で、高坂達レッドスパイダーは、その末端構成員らしいな。傘下でパシリやる代わりに、存在を認められているというか、見逃されているらしい。オーガから下ってくる命令は意図がわからずとも全て逆らえない状況だそうだ」  大きな抗争が起きるのも厄介だが、タチの悪い1チームが小さいといはいえ一つの市や町を全て仕切っている状況というのも考えものなのである。場合によっては、その後ろに本家本元のヤクザのバックアップがついていることもあるから尚更に。
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