<第二話・ブラッディ・ローズ>

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 気になったことが、いくつかある。彼らがオーガから命令を受けていたというのはまだいいが――では、オーガはどんな意図でそんな命令を下したのか?が問題なのだ。いよいよ漢庭市が自分達のチームで統一できそうなので、数宮市に攻め入ってきたというのならまあわからない話ではない。その最大の脅威であろう、ブラッディ・ローズを潰したいというのも理解できない話ではない。話ではない、のだが。  ブラッディ・ローズに喧嘩を売るというのなら、少々やり方が中途半端すぎるのである。レッドスパイダーなんて小物のカラーギャングをけしかけたところで、大した戦果が上がらないのは目に見えているではないか。実際、三人新人を殴り倒した時点で報復されて、リーダーも含め全員が壊滅的打撃を受けるに至っているのである。  確かに三人、病院送りにしたはいいが。ブラッディ・ローズの主戦力が誰であるかなんて、少し調べればすぐわかることだ。一部新人以外はみんな喧嘩が出来るが、最も脅威なのはトップの花蓮とNo.2の臨矢である。下っ端(という言い方をするのはアレだが、ここではあえてそう言おう)をいくら削ったところで、自分と臨矢を倒さなければブラッディ・ローズを壊滅させるなど夢のまた夢なのだ。本気で喧嘩をしたいと思うのなら、レッドスパイダーだけではなく傘下全員引き連れて一気に攻め込んでくるくらいしなければ全くお話にならないはずなのである。  それをしないのには、何か理由があるのかどうか。  いやそもそも彼らは、本当にブラッディ・ローズそのものに喧嘩を売りたかったのかどうか。 「ヘル・オーガってチームがここまで力をつけたのは最近みたいですけど……チームそのものはすごく歴史が古くて、十年以上も前から存在しているみたいですよ」  うーん、と首を傾げながら言う樹。 「今はヤクザと繋がってるって噂もあるし。もしかしたら……喧嘩を売りに来たのも、そのヤクザからの命令があったからなのかも」 「マジか、さすがに本職とやるのはめんどくせぇなあ」 「大体、襲撃した上で連れ去ろうとしたってのが気になるんだよな」  花蓮と同じことを疑問に思ったらしい、臨矢が口にする。 「叩いたのが幹部じゃない。戦力でもない。そしてぶっとばしてそのままではなく、車を使ってどこかに連れ去ろうと画策していたっていう状況。もしかしたら俺らに喧嘩を売るためというより、“たまたま”チームに所属していたあの三人を何処かに連れ去ることの方が目的だったのかもしれねーな。どういう目的なのかは想像もつかないが」  全ての始まりは、仲間の襲撃事件から。  そう、この事件は実のところ、本当に恐ろしい事実を暴くための序章に過ぎなかったのである。  残念ながら、花蓮がそれに気付くのは――だいぶ後になってからのことであったが。
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