<第二話・ブラッディ・ローズ>

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<第二話・ブラッディ・ローズ>

 元より、ギャングチームというものの多くは“縄張り意識”というものが強い。例えば本拠地となっている学校の周辺。気に入っている店や、たまり場になっている場所。例えばレッドスパイダーの場合は、潰れて誰もいなくなった廃工場が主な根城となっていた。自分たちブラッディローズの場合は、先輩が経営している此処『BAR・MIKAMI』。基本は、その根城となっている場所の近辺を“自分たちの支配権”と考えるチームが少なくないのである。  縄張りが被れば、チームのリーダーの意向にもよるものの――お互いの陣地をかけたバトルが勃発する。好戦的なチームならば、相手のチームを叩きのめして吸収し、向こうの陣地を奪い取ってしまおうと考えるケースさえありえることだろう。広い街なら特に、全て自分たちの顔がきく“縄張り”にして、肩で風を切って歩く生活をしたいと考える者も多いに違いない。まあ、花蓮に至っては“自分のガッコの周辺が平和ならそれでいーよ”思考なので、基本他のチームに攻めて来られない限り手出しするということもないわけだが。  花蓮が他のギャングたちと違うところは、あくまで自分達の学校と町の平穏を守る為にチームを結成しているだけ、という点である。他のチームに喧嘩を売って、陣地を奪い取りに行きたいだとか、町を自分たちのチームだけで統一したいなどという野心は一切抱いていない。残念ながら喧嘩を売ってくる連中が後を絶たないせいで、いつの間にか“喧嘩屋”なんで不名誉な名称がつくようになってしまったわけだが。 「この近辺は、遊ぶのにもってこいのゲーセンとか店も多いしな、“縄張り”を取りたがる奴らも多くて、代替わり直後は喧嘩を売ってくる奴らも増えたわけだが」 「そもそも少数精鋭ですもんね、俺ら」  臨矢の言葉に、うんうんと頷く弟分達。 「今でこそ四十人ちょいのチームになりましたけど、三代目の花蓮さんになった時は半分くらいの人数だったし。そんな小さなチームが、この近辺で大きな顔してるのが気に食わないって奴らは多かったんでしょ。ましてや、花蓮さんが女だってだけでナメくさった奴らも多かったし……あ、思い出したらまた腹たってきた!」  そうプンスコするのは、このチームに入って一年、まだ中学生の四宮樹(しのみやいつき)である。チームの中では新人でランクも低いのだが、元々フレンドリーな関係がウリのチームだ。何をするにも一生懸命で、先輩達の役に立とうと頑張る樹の姿は、小柄で可愛らしい見目もあってチームの癒しになっているのだった。  よしよし、とそんな樹の頭を撫でつつ花蓮は言う。 「そりゃまあ、しょうがねえよ。俺が女じゃなくても、先代が代替わりする時も弱体化したと思ってナメた連中が押し寄せたっていうじゃねえか。まあ、こっちから喧嘩売ることなんざねえのに、押し売りしてくる連中が多いせいで“喧嘩屋”扱いされるのは微妙な気分になるけどな」 「しかも、大半の敵は花蓮さん一人でブチのめしますしね」 「一騎当千ってやつだな」 「俺らの出番、基本的に回ってこないもんな」 「あんま持ち上げるなよ、あいつらが弱すぎるだけだって。……まあ、それはいいんだけど、問題は。チームの規模が四十人超えて、連中がおとなしくなってきたところで……今回の襲撃があったってことなんだけどな」
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