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目覚めても夢のことで頭はいっぱいだった。
少女は最後に泣きながらも少し微笑んでいてくれたように見えた。
どうして初対面の、ましてや夢の中だけの幼い少女を思い浮かべただけで、こんなに心がほっと温かくなっているのだろう。
少しして僕のことを起こしに来た母は部屋に入って僕を見るなり驚いていた。
「あんた、そんなに涙流してどうしたの? よっぽどの怖い夢でも見た?」
母の言葉で初めて僕は自分の涙に気がついた。
少女の顔が頭から離れなくて、優し気な声が耳にこびりついて、自分でもよくわからないけれど、涙が止まらなかった。
わけがわからないまま、ただただ声も出さず、ぼろぼろと泣くことしか出来なかった。
その理由は、高校生になった時、知ることになった。
両親から告げられた、一つの真実。
「あなたには、お姉ちゃんがいたのよ。」
僕が生まれる前、幼い頃に交通事故で亡くなったそうだ。
それは予想だにしない両親からの告白で、だけどなんだかとても腑に落ちた。
――ああ、そうだったのか。
姉さん、僕、負けないよ。どんどん成長して、どんどん立派になって見せるから。見守っていてね。
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