不器用な出会い

1/4
前へ
/43ページ
次へ

不器用な出会い

ウォールナット柄のテーブルに、色鮮やかな料理が並ぶ。 どれもこれも見慣れない美味しそうな料理が並ぶたびに、女の子が嬉しそうな声を上げる。聖を除いて。 「それじゃ、乾杯!」 コツン、とグラスをぶつけながら言葉がつっかえてうまく出てこなかった。 いやいや、ちょっと待って。自分は打ち合わせに来たはず。そう、社内冬のスポーツ大会。 ちゃんと書類も持ってきた。筆記用具も。それなのに、自分が今手にしているのはシャンパン。 初めて飲むけど美味しい。しかも飲みやすい。料理にも合いそう。だから、そうじゃなくて。 「えっと、自己紹介する?みんな同じ会社内だけど」 少し上擦った男の声を聞きながら、聖はゆっくりと状況を飲み込んでいく。 「いいね、ザ・合コンって感じ!」 楽しそうな声に、聖はピシリと固まった。 合コン・・・とは。 こんなお洒落な居酒屋で、こんな事になっているのか、全然意味が分からない。 分かっているのは鞄に入っている“冬のスポーツ大会”の書類は裏紙になるという事だけだ。 自己紹介は男性から始まった。同じ社内ということもありほとんど見知った顔だ。 隣に座っている雪を突く。言いたいことが山ほどあるが、この雰囲気ではなかなか話せない。 元々感情を出すのは苦手だし、ここで問い詰めたら嫌でも注目を集めてしまうだろう。 この場の雰囲気も壊したくない。 「雪、合コンって、何」 ヒソヒソと、短い言葉を並べる。 雪は自己紹介に拍手をしながら、「タイプな人いますか?」と微笑んだ。いやいや、だから違う。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加