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「次、一磨ー。」
「はァ!?」
「ほら、自己紹介の順番きたよって」
「する訳ねえだろうが!」
プイ、と横を向いてしまった男に、友人が「ええと、久遠一磨君でーす。」と彼を指さしながら言った。呆気に取られてその場にいた誰しもがフリーズしてしまった。
気まずい雰囲気が流れて、やばいと思ったのか「営業部で、ええと、無理矢理俺が一磨を連れてきてしまって。」と最後は自白のような自己紹介になってしまった。隣の彼は相変わらず顰めっ面で、怒っているように見えた。
「あはは、じゃあ私が聖さんを連れてきたのと同じですね!」
雪の明るい声につられて、皆がくすくすと笑い始めた。
ホッとしてシャンパンをまた口に含む。シュワと柔らかく弾けて、スッと溶けるように甘さが消える。
一息ついて顔を上げれば、先程の彼がじいっと睨むように此方を見ていた。
同類だと思われたのだろうか。軽く頭を下げれば、すぐに視線を逸らされてしまう。
こんなに態度も目付きが悪いのに営業部だなんて、少し意外だった。
女性陣の自己紹介が始まった。
自分の自己紹介は、まるで新入社員のようだと笑われて、顔から火が出るとはこの事だと知った。
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