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「バレッバレなんだよ、へたくそが」
「何が・・・!」
「逃げんなよ、捕まえたくなるだろ」
進行形で捕まっている。
そう言い返そうと、頬を掴む手首を両手で引き剥がそうとした。けれど、頬に食い込む指に力が入るばかりでびくともしない。
相変わらずどんな顔をしてるのか分からない。自分の顔ばかり熱を持ってしまって見られるのが恥ずかしくて、不公平だと奥歯を噛み締めた。ぐっと近づいた顔が小さく笑う。
「照れてんのか」
「照れてない!離して!痛い!」
「ハッ、うるせぇ」
男は少し首を傾げ、視線を落としたまま顔をさらに近づける。
ーーーキスされる。
反射的にきつく目を瞑る。
真っ黒になった視界の中で、歯を食いしばって いたが、暫くして彼は大きく舌打ちをした。
「・・・また泣かれても困るな」
ボソリ、と呟いた言葉は聞き取れなかった。
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