橘という男

5/7
前へ
/43ページ
次へ
なるほど。 橘は小さく笑った。 「・・・俺、牧原さんの手好きだな〜」 これは本当。 掌だけでなく手の甲まで、肉付きがよくて触り心地が良い。 この手で色んな所を触って欲しいし、触ってあげたい。頬擦りしたら最高に気持ちよさそうだな。手だけじゃなくて他のところも、なんて男なら想像してしまう。 すべすべとした感触を楽しみながら、橘は聖の顔を覗き込んだ。意図的にそうした。手を触れられて見つめれば、女の子はみんな顔を赤らめる。何度も経験してきた事だ。 一磨の話をしていた時のように真っ赤になればいい。 そう思っていたのに。 「・・・?」 彼女は軽くひいていた。 冷めた目に見返され、目論みが外れた事を知った。深いため息が漏れる。 「・・・それは予想外だわ、牧原さん」 「・・・はあ」 「その荷物は大変でしょ。郵便局まで送るよ、俺車あるし」 握っていた手を離し、ポケットから車の鍵を取り出した。それを見て「いいんですか?」と驚きながらも少し嬉しそうにした彼女は、年相応で可愛いく見えた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加