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腕時計を見れば、既に1時間半が経っていた。
間違いなく合コンというものなのだろう。アルコールが入り皆楽しそうにしていた。聖と目つきの悪い彼を除いては。
だからといって、お仲間同士で話す事は無かった。彼は対角線状の席に座っていたし、電話で席を離れることもあった。忙しいらしい。
自分は当たり障りのない挨拶を早々に済まして、シャンパンに夢中になっていた。アルコールの中で一番好きかもしれない、と革命が起きている。ついつい長居してしまった。
「雪ちゃん、私そろそろ帰るよ」
お札を一枚ひっそりと渡して、コートと鞄を抱えて立ち上がった。
「え?まだデザート来てないですよ」
「・・・大丈夫。もうお腹いっぱい」
正直まだまだ食べれるから、デザートの誘惑に負けそうになった。目敏い後輩は、それに気づいたらしく「ここのデザート、聖さんの好きなレアチーズケーキ」と可愛い顔で追い討ちをかけた。う、と言葉を飲み込む。
月曜日、出社したら絶対怒ってやる。
立ち上がったものの、葛藤で足が動かない。ニコニコと笑っている雪を睨みつけていると、後ろに近づいた気配に気づけなかった。
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