不器用な出会い

3/4
前へ
/43ページ
次へ
腕時計を見れば、既に1時間半が経っていた。 間違いなく合コンというものなのだろう。アルコールが入り皆楽しそうにしていた。聖と目つきの悪い彼を除いては。 だからといって、お仲間同士で話す事は無かった。彼は対角線状の席に座っていたし、電話で席を離れることもあった。忙しいらしい。 自分は当たり障りのない挨拶を早々に済まして、シャンパンに夢中になっていた。アルコールの中で一番好きかもしれない、と革命が起きている。ついつい長居してしまった。 「雪ちゃん、私そろそろ帰るよ」 お札を一枚ひっそりと渡して、コートと鞄を抱えて立ち上がった。 「え?まだデザート来てないですよ」 「・・・大丈夫。もうお腹いっぱい」 正直まだまだ食べれるから、デザートの誘惑に負けそうになった。目敏い後輩は、それに気づいたらしく「ここのデザート、聖さんの好きなレアチーズケーキ」と可愛い顔で追い討ちをかけた。う、と言葉を飲み込む。 月曜日、出社したら絶対怒ってやる。 立ち上がったものの、葛藤で足が動かない。ニコニコと笑っている雪を睨みつけていると、後ろに近づいた気配に気づけなかった。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加