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必死なんだわ
昨日は橘さんに甘えて郵便局まで送ってもらった。本日中に送らなければいけないあの大荷物を抱えて行くのは大変だったので、正直すごく助かった。
橘さんはお礼はいらないと言っていたけど、何かお返しはしたい。
何がいいんだろう。そう考えながら眠りにつき、特に答えが出ないまま朝になった。
「あ、姉ちゃん。今日も俺出かけるから」
「うん。夜は何処か食べに行く?」
「いいね!」
颯汰が洗面室から顔だけ出す。
毎日何処かに楽しそうに出かけているけれど、夜はご飯を作って待っていてくれる。人が居る温かな部屋に戻る幸せはそろそろ終わってしまうと思うと寂しくなった。颯汰は今週末に帰る。
身支度を整えて鞄を手にして、洗面室を覗き込む。颯汰がパーマのかかった髪の毛に指を通して、くしゅくしゅと揉んでいた。
「何してるの?」
「ワックス!」
ほら!と差し出された手の平にはワックスがべったりとついていた。
「姉ちゃんにもつけてあげる」
「えっ、いや、いいよ」
「毎日お団子にしてたら髪の毛可哀想じゃん!」
がしっ、とお団子にした髪の毛を掴まれる。
そのワックスのべったりついた掌で。
「ちょ、ちょ・・・颯汰!」
後頭部を引っ張られる感触に、ヘアゴムを外されたと理解した。思わず壁の時計を見やる。髪をセットし直していたら遅刻するかもしれない時間だ。
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