第1章 悲しみ

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『ごめん、花奈さんとは結婚できない』 結婚式の当日の朝、良裕からメールがあった。花奈は冗談かと思っていた。だから、参列者の手前、花奈は込み上げてくる不安を顔に出さないようにした。  何時間経過しても、良裕が来る様子はない。良裕の兄やその親族もいない。 花奈は胃がきりきり痛んだ。祈るような気持ちで良裕のスマホに何度か電話をかけてみたが、電話は通じなかった。  しばらく虚ろな表情で周囲を見つめていた花奈は急に倒れて、意識を失った。  あとで聞いた話によると、良裕は花奈との婚約を破棄し、綾瀬食品の副社長という地位も捨てて、日本を離れてしまったらしい。その理由は謎のままだ。  良裕の兄や親戚とも全然連絡が取れなかった。
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