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第1章 悲しみ
朝の眩しい光をいっぱいに受け、花奈はベッドの上で膝を抱いた。
「もしかしたら、今のは夢だったのかもしれない」
しかし、その花奈の儚い夢も、ノックして入室してきた両親の言葉に打ち砕かれた。
「今回のことは青天の霹靂だったけれど、副社長の荷はどうやら良裕さんにとって重かったようね。ごめんなさいね、花奈。辛い思いをさせてしまったわね」
母が大きなため息をつく。父は沈黙を守っていた。
「良裕さんは一体、どこへ?」
「渡米したみたいだわ。彼の友達がそう言ってたの」
花奈の目から涙が溢れてくる。母がそっと花奈の手を握った。
後から、両親が参列者にお詫びし、山ほど届いていた結婚祝いの贈物を送り返して全ての後始末をしたことを知った。
花奈は大勢の人の同情を一身に集めた自分が惨めで、情けなかった。
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