神さまとテスト

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 今日は高校の合格発表だ。  緊張のせいか朝早くに目が覚めてしまった。二度寝をしようとしたけれど、一度あいたまぶたはガンコで、おとなしくひっついてくれない。  枕もとに置いた受験票を手にとった。433番、加藤ユリカ。  名前の下から、口もとをきつく結んだ少女が見つめ返してくる。写真を撮るときも、緊張してたんだな。いまもこんな生真面目な顔してるのかな。ちょっとおかしくなって、ほほがゆるんだ。  どうか、合格していますように。  発表時間よりも少し遅れて行くことにした。ママがいっしょに行こうかと声をかけてくれたけど、頭をふった。一人で静かに、結果をたしかめたかったから。  朝ご飯をゆっくり食べて、バス停までゆっくり歩く。バスもなぜだか、ゆっくり走ってくれた気がする。  高校前のバス停で降りたのは、あたしだけ。雲に透けて見える青空をぼんやり見上げて、正門までのゆるい坂をゆっくりとのぼる。ななめに当たる朝の日ざしがやわらかかった。  門をくぐった先には、抱きあって喜んでいる子がいた。がっくりと肩を落としている子も。あたしはどうなんだろう。 「合格者」と大きく書かれた掲示板には、たくさんの数字がならんでいる。あの中に自分の番号はあるのかな。  すぐに探すのがこわくって、知ってしまうのがこわくって、左の上から順番に見ていった。できるだけゆっくり。走っていきそうになる視線を抑えてゆっくりゆっくり。  この一つ一つの数字には、一人一人の努力が詰まっている。数字がとんでしまっているところにも、すごいがんばりがあったはず。  カメラのシャッターを切るみたいに、数字ごとでまばたきをして、次へと焦点を合わせる。もうそろそろ、あたしの番号だ。  先を見るのがいよいよこわくなり、うつむいて目をつむった。強くかんだ奥歯から力をぬくと鼓動がもれてしまいそう。  さあ、たしかめるんだ。大きく息をすって、まぶたをあけた。  もうさっきのように受験番号を一つずつの見ている余裕なんてない。増えていく数字を追いかける視線が止まった。  あった。あった。あったよ。あたし合格したんだ。合格できたんだ。  黒くしきつめられた数字たちが、じんわりゆがんでぼやけていく。あとはもう、熱いしずくがいくつもいくつも、あたたかな日を受けたほほを転げおちていった。
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