神さまとテスト

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* * * * *   うひゃっ、まずい。想像以上だぞ、これ。  おそるおそる開いた成績表には悪魔が数字をかかえて踊っていた。  期末テストを返されたときから、いやーな予感はしてたんだよね。でも、もしかしたらあたしの思いすごしかもって、泡みたいな期待を持ってたけど、やっぱりはじけて消えちゃった。  魔物が暴れ出ないように成績表を両手できつく閉じた。  耳も閉じちゃったのか、がやがやとしたみんなの声が遠のいていく。目は開いてるはずなのに、周りがすうっと暗くなって、一人ぼっちですわっている気分だ。  小学生のころは授業でわかんないことなんて、めったになかった。だから、あたしって頭いいかもー、なーんて思ったりもしてた。  だけどそれは、完全な勘違いだってことが中学になって判明してしまったのだー。ガッガーン。  テストの順位は真ん中よりも下だった。  もちろん勉強は好きじゃないよ。はっきり言えばきらいだし。でも平均は超えてると思ったのに。くくく。泣けるな。まさか、あたしって頭悪いの?  重たい空気がどんどん胸につめこまれて、体からはどんどん力が押し出されていく。がくんと頭が下がった。あと少しで机に当たるなー、と思ってたらゴンと前から大きな音がした。  驚いて顔を上げると、エリナが机に頭突きをかましていた。長い髪が滝のようにふちから流れ落ちて、まったく動かない。スイッチ、完全にオフでございます。  エリナもやっちゃたんだな。ここはへこんだ者同士、語らいますか。 「なんかさあ、中学になったらいきなり勉強が厳しくなった気がしない?」 「ユリカの言う通りだよーん。小学校のころはテストで順位なんてつかなかったよね」  エリナの額はきっちり赤くなっていて、なんだかかわいい。 「しょうがねえだろ。高校は頭のいい順で決まるんだから」  いつの間にかそばにいたリュウセイが、気になることを口にする。 「高校受験なんて、ずっとずっと先の話だよ。中一のテストなんて関係ないでしょ。もうテストばっかでいやんなっちゃうよ」  あたしのグチと八つ当たりのお返しに、リュウセイの不吉なお知らせを届けてくれた。 「なんかな、姉貴が言うには内申書ってのがあってな、一年のときからテストの点がポイントみたいにたまっていくんだと」 「えー。じゃあ、もう高校受験って始まってんのー」  エリナの声が頭のてっぺんから飛び出した。真横でやられたんで耳がキンキンする。あんなに高い声は出せないけど、あたしのびっくりの高さはエリナの声に負けてない。
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