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「は?じゃねぇよ!」
ほっぺをつねられた。
「小さな時から一緒に居て、何も気付いてねぇの?人の気持ちは薬じゃどうにもならないの!暗かろうが、地味だろうが!俺は、なんでも夢中になって意味不明に頑張る幼馴染の萌が!小さい時から目が離せないの!
あんまり勉強ばっかすんなよ?しかも…惚れ薬……。
他の奴じゃなかったから許す!」
それだけ言うと、またトイレと走って行く。
この5年間の野望は失敗に終わった。
だが、して来た事は無意味ではなかったらしい。
本を読むために集めた辞書、少しは話せる様になった英語、数式、公式、化学式の山。
私を成長させていたらしい。
冷静になれば……進学校にいつの間にか入学している。
成績底辺だったのに………。
ポカンとして、カーテンを久し振りに開けた。
綺麗な十五夜のお月さまが、光を照らしてくれていた。
「なぁ、マジで死なない?」
トイレからご帰還の一平が部屋に戻って来て聞く。
「うん……。漢方だから、大体が…。」
「トカゲの黒焦げとか入れてない?」
「入れてない…。そこ、追求しない方が幸せじゃない?」
「分かった…。追求しないから約束してくれ。」
「…何でも、どうぞ!」
親とか警察とかに言われたらヤバイと思って、殴られる位は覚悟した。
「また、何か考え付いたら、まず教えてくれ。それと、他の奴には飲まさないでくれ。惚れられたら困る。」
野望は失敗に終わったが、結果的に成功したようだ。
お月様に照らされて、月明かりの下、初めて出来た彼氏が笑う。
初恋が実った。
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