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#02
実は…
俺、彼女の事を知っていた。
急に彼女の方から、声をかけられ、つい知らないふりをしてしまった。
俺を見てあの日のままの笑顔で『私!覚えてない?』
なんて言われて、本当は嬉しかった。
俺の動揺も落ち着き、今やっと思い出したかのように振舞い彼女を近くの珈琲ショップに誘った。
18時過ぎ…
彼女の子供が塾の時間、これから約2時間ぐらいの時間がある。
結婚してしまった彼女だったが、時間がある事は知ってた。
さっきまで知らないふりをしていたんだ、あえて俺は聞いた。
「時間平気?」
「うん、少しなら。」
声が弾んだ彼女。
そんな彼女を俺は
…ずっと好きだった。
俺が…だけど。
彼女は先生が好きだっ
…と友達に聞いた。
「ね?喫煙席でも良かったのにタバコ吸うんでしょ?」
「えっ?ああ。」
そんな気遣えるところも、やっぱり変わらない。
「なおこ、なに飲む?温まりたいだろうけど、猫舌だからアイス珈琲でいいんだったな?」
彼女は、懐かしい笑顔を俺に見せてくれていた。
「何年経ってると思ってるの。」
あの日から、ようやく探しだせた彼女。
「そうだよな、ホットでいいか?」
「メニュー見せて。」
彼女に、メニューを渡した。
「やっぱりアイス珈琲。」
「フッ、俺も。」
緊張と興奮からか、身体中暑かった。
俺たちの空間だけが、
あの時過ごしていた11年前に戻っていた。
この眩しいくらいの、笑顔を俺だけに向かせたい。
やっと見つけられた!
もう誰にも、遠慮なんてしない。
彼女を俺はずっと…好きだった。
それを奴は、
知っていたはずなのに…。
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