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#03
珈琲が、私達のテーブルに運ばれてきた。
「甘いのが、好きでしょ。」
私はそう言いながら、自分の横に置かれたガムシロップを彼に渡した。
「あぁ、ありがとう。」
それから1分?
ううん…。
10分ぐらい感じた、沈黙。
「どうか…した?」
せっかくアイスコーヒーで潤したはずの喉は、カラカラだった。
彼が、話さなくなって不安になった。
「へっ?ああ、なおこ、変わらないなあ。…と思ってさ。」
なんて彼は、そう言ってくれたけど。苦し紛れの言葉だって、すぐにわかった。
確実におばさん化して、日々の生活に必死でオシャレなんて二の次だったし、送迎の合間にスーパーに買い物に来ただけで。
そりゃね、
いつ誰と会ってもいいように!
って思っては、いたけど…。
思いつきで来たから…。
まさか。
彼と会うなんて…!!
窓にうっすらと写る、
自分があまりにも醜く…見えた。
「なんか、ごめんなさい。」
謝りたくなった、
分かっても彼に声なんてかけるんじゃなかった。
「なにが?」
急に、彼が眉を寄せた。
フフッ…変わってない。
私怒られちゃう。
「まさか、私なんかが…とか言うんじゃないだろうな!」
「まっ、まさか、」
私は笑ってごまかした。
「そうだな…。」
また…沈黙になっちゃう!
話題。
「あっ!」
話題探さなきゃって…彼見てたら、彼の左手の薬指。
「なんだよ!急に今度は何!」
「結婚したんだ!…なんだ言ってよ!」
なんだ…
なんかちょっと残念。
残念?
彼と、どうこうなろうって思ってついてきたわけじゃないけど…
ちょっと、
ほんと…
ちょっと、
ちょっとね。
期待しちゃったから…。
「ああ、これ?」
私は、うなずき彼の言葉をまった。
「魔除け!!」
「はあ?」
フッ…彼らしい。
「なんだかさぁ。」
彼は私を真剣な顔で見つめながら…。
「好きな奴の事忘れられなくて、彼女いないの?とか聞かれるのも、めんどくさいし…な。」
彼の真剣な眼差し、彼をここまでさせてる人が羨ましく思えた。
あの頃、
友達に彼には好きな人がいるって聞いて…告白をやめた。
やめなかったら…
どうなっていたんだろ?
後で、その情報が違う事もわかったんだけど私は…自分の気持ちを彼に言わなかった。
「私?なんて~ね。」
私の言葉に彼はひどく、驚いていた。
「やだな…冗談よ?冗談。」
彼は、黙ったまま目をそらすことも無くただ私を見ていた。
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