第50話【第3試合目のレポート】前編

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会場から感心するような歓声が上がっていた。 まさかマッチョでパワーキャラにしか見えないアレックスが、そのような可憐な体術を見せるとは誰も思ってもいなかったからだろう。 「とろいな、おまえ」 「ぬぅ!!」 揶揄されたロンギヌスが槍を一本釣りのように振り上げた。 槍先に立って居たアレックスの体躯が投げられ宙を舞う。 そして、膝を抱えながら回った後に体を伸ばしながら捻るとアクロバティックに着地する。 またもや可憐である。 それを見て観客たちが歓声を上げた。 しかし、ロンギヌスは冷静だった。 アレックスの着地直後から攻撃を仕掛ける。 だが、今度はアレックスの反撃の番だった。 走って来るロンギヌスにカウンターの金棒を合わせる。 横振りのフルスイング。 金棒がロンギヌスを横殴ったと思われた。 しかし、スイングの後にロンギヌスの身体が消える。 アレックスは金棒を振り切り、身体を捻った状態で驚いていた。 しかし、もっと驚いたのは、後ろから声を掛けられたことである。 「あんたのほうが、とろくないか?」 フルスイングに振りきられた金棒のうえにロンギヌスが立っていた。 アレックスは振り向くことなく金棒を背負って今度は縦に振り回す。 まるで金棒を全力投球するかのような振り切りだった。 そのスイングに、金棒の上に立って居たロンギヌスが飛んで行く。 真っ直ぐ飛んで行くロンギヌスは、膝を抱えて回った後に体を伸ばしながら捻るとアクロバティックに着地する。 「なかなか、遊んでくれるじゃあねえか」 「私も闘士だ。ファンサービスぐらい心得ている」 「超悪役なのに、よく言うぜ」 「お陰さまで、ファンが多くてな」 アレックスも笑っていたが、ローブで顔を隠していたロンギヌスも笑っていた。 そして、観客も盛り上がっている。 戦う両者の目論むままにだ。 闘士同士が打ち合わせ無く、空気を読み合い仕組んだ演出だった。 まさにプロで超一流の闘士である。 会場の盛り上げかたを心得ていた。
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